金属にグラインダーを当て、その火花の色や形で鋼種を見分ける…。豊熱鋼業には1981年の立ち上げから技を磨き続けてきた職人達がいる。豊熱鋼業の過去・現在、そして未来について職人たちの言葉をまとめた。
もともとこの仕事を始めたのは20歳の頃。名古屋のとある会社で当時60歳のオヤジさんに手ほどきを受けて、技術を少しずつ身につけていったんだ。そのオヤジさんとは40も年が離れていたから、正直、はじめはやりにくかった。何度も辞めたいと思ったよ。入社してしばらくはグラインダーに触らせてもらえなかった。仕事は見て覚えろってタイプの昔ながらの職人気質だったんだ。それでもそこで10年頑張った。なんとか仕事ができるまで、それだけの時間がかかったんだ。 その頃だったな、一緒に豊熱鋼業を立ち上げないかと誘われたのは。その会社を辞めて豊熱鋼業で仕事をするようになってからも色々世話を焼いてくれたオヤジさんは俺の職人としてのルーツなんだ。
金属にグラインダーを当てて火花を出す。その火花の色や形でその金属の鋼種を見分ける。 理屈は簡単だけど、実際はそう簡単にはいかない。ウチの職人達は10年以上、この仕事を 続けているベテランだから、自分の目だけで50以上の鋼種を見分けることができる。 確実性を得るために分析計も使っているけど、ひとつチェックするのに約10秒かかってしまう。このスピードでは仕事にならない。もっと早く、より確実な選別ができるようにますます技を磨いていきたいね。
ウチの売りは、火花試験により素早く特殊鋼スクラップを選別すること。作業コストが抑えられるから 高価での買取りが可能であり、お客さんからの急な仕事の依頼にも対応ができる。製品の品質向上についても積極的に取り組んでいるよ。たとえば、2鋼種以上が混合している特殊鋼スクラップでもプラズマ切断機で分離させ、それぞれの鋼種ごとに再資源化させている。また、定期的に分析計を使って選別の正確性を確認するなど、品質管理を徹底してやっているんだ。だから、安心してウチに仕事を任せていただきたい。
今はお陰様で、大手の自動車メーカーや特殊鋼メーカーからも仕事を任されているけど、これはウチの選別精度の高さを買ってもらえているからなんだ。これまで選別精度に対するクレームはほとんどないよ。それが豊熱鋼業の誇りでもある。これからもこの信頼は守り続けていきたいね。 将来は扱い品種や集荷範囲を広げたいと思っている。まだまだ、貴重なレアメタルを含む特殊鋼が鉄スクラップとして流通したりしているからね。限りある資源の有効活用はやっぱり大切だよ。そして、それが結果的に世の中の役に立っているのなら、それはとても良いことだよね。